化学物質があふれる現代社会では、化学物質過敏症の方々が周囲の無理解に苦しむことが少なくありません。身体的なつらさに加え、精神的にも追い詰められ、不安やパニックに陥ることもあります。
そんな時、まずお伝えするのは、
「大丈夫。時間はかかるけれど、一つひとつ対処していけば、少しずつ楽になります。一度に全部やろうとしなくて大丈夫です。」
この言葉を聞くと、多くの方が少し落ち着きを取り戻されます。
私自身が当時、自分に繰り返していた言葉は、
「人は自分が経験したことしか分からない」 ということでした。
01|「治りますか?」と問われる方へ
発症したばかりの方から、「治りますか⁈」と必死に尋ねられることがあります。
そのお気持ちはよく分かります。確立された治療法がない中、希望を見いだせない方がほとんどでしょう。
私は医師ではないので「治る」と断言はできません。
しかし、私の感覚として、「治る」という表現は少し違う気がしています。
化学物質過敏症は、病巣がなくなって完治するというよりも、外部要因への反応度が落ち着いていくものだと思います。
それを表すのに最も適した言葉は 「寛解」です。
そして、私は 化学物質過敏症は寛解する と考えています。
寛解 (かんかい)とは:病気が完全に治った「治癒(ちゆ)」という状態ではありませんが、病状が治まっておだやかであること。
02|理解と協力
周囲に理解を求める前に、まず相手の立場も理解しようとすることが大切です。
協力をお願いするときには、
「私は化学物質過敏症です。こういうことで体調が悪くなります。このようにしていただけると助かります。」
と伝えるようにしました。
例えば、
「香り付きの洗剤を使った服の近くにいると、吐き気や頭痛が起こります。私と会うときだけでも無香料の洗剤を使っていただけると助かります。」
「私は合成香料で体調が悪くなります。申し訳ありませんが、香水や柔軟剤を控えていただけるとありがたいです。」
「新築の建物や塗装のにおいが強い場所では動けなくなってしまいます。可能なら、打ち合わせの場所を換気ができるところや窓の近くにしていただけませんか?」
こうしてお願いすると、理解しようとしてくれる方も多くいます。
一方で、すぐに受け入れてもらえなかったり、伝わらなかったりすることもあるかもしれません。
それでも、少しずつ伝えていくことで、協力してくれる方が増えていくことを実感しています。
03|どうか希望を失わないで
これからコラムでお伝えしていく内容は、私自身が試行錯誤した経験のまとめです。
化学物質過敏症は、反応する物質も症状も人によって様々です。
私の方法がすべての方に当てはまるとは限りません。
しかし、「こういう方法を試してみた」という事例として、何かの参考になると思っています。
最初は手探り状態だった私も、何年もの経験を経て、今では「こうすれば良い」という自分なりの対処法があります。
そして、もっと早く適切な対処ができていたら、ここまで重症化しなかったかもしれないという思いもあります。
だからこそ、今苦しんでいる方が少しでも楽になれるように、この思いを書きました。
化学物質過敏症は良くなります。どうか希望を失わないでください。
〈引用元〉横山奈保子
著「化学物質に過敏なあなたに」より