日常生活の中にあるごく微量の化学物質に反応して、さまざまな体調不良が引き起こされる病気
それが「化学物質過敏症(MCS: Multiple Chemical Sensitivity)」です。
この症状は、過去に大量の化学物質に曝露された経験や、長期にわたる慢性的な曝露が引き金となり、その後、身の回りにある様々な製品に含まれるごく少量の化学物質にも過敏に反応し、身体的・精神的な症状が現れる病気です。
※曝露とは、化学物質に関しては「さらされる」という意味で使用されています。
呼吸や皮膚などを通じて体内に化学物質を摂取してしまう状態を「曝露する」と表現しています。
01|国際的な診断基準
1999年、アメリカ国立衛生研究所(NIH)により提示されたMCSの診断基準は、以下の6項目です
1. 微量の化学物質に反応する
2. 多種多様な化学物質に反応する
3. 化学物質から離れると症状が軽減する
4. 再び曝露されると症状が再現する
5. 慢性的な経過をたどる
6. 症状は多くの器官にわたる
これらに当てはまる場合、化学物質過敏症と診断される可能性があります。
02|多様な症状とその影響
化学物質過敏症の症状は非常に幅広く、人によって感じ方や反応度(重症度)も多岐にわたります。
代表的な症状を部位ごとにまとめます。
【目の症状】
・視界が霞む
・視力が落ちる、物が二つに見える
・目の前に光が走るように感じる
・眩しい、チカチカする
・目が乾く
・涙が出やすい
・かゆい、ゴロゴロする
・疲れる
・目の前が暗く感じる
【鼻の症状】
・鼻水が出る、詰まる
・かゆい
・乾く
・鼻の奥が重い
・後鼻腔に何か流れる感じがする
・鼻血が出る
【耳の症状】
・耳鳴りがする
・痛い、かゆい
・音が聞こえにくい
・音に敏感になった
・耳の中がぼうっとする感じがする
・耳たぶが赤くなる
・中耳炎を起こす
・めまいがする
【口や喉の症状】
・乾く
・よだれが出る
・口の中がただれる
・味覚が鈍くなる
・においがする
・のどが痛い
・のどが詰まる、ものが飲み込みにくい
・声がかすれる
・咽頭に浮腫が出来る
【消化器の症状】
・下痢や便秘を起こす
・むかむかして吐き気がする
・おなかが張る、圧迫感を感じる
・おなかが痛くなったり痙攣が起こる
・空腹感がある
・胸焼けがする
・げっぷやおならがよく出る
・胃酸の分泌過多になる
・小腸炎や大腸炎を起こす
【腎臓・泌尿器の症状】
・トイレが近くなる
・尿がうまく出ない
・尿意を感じにくくなる
・夜尿症になる
・膀胱炎を起こす
・腎臓障害が起きる
・性的な衝動が低下する
・インポテンツになる
・性的な行動が過剰になる
【皮膚の症状】
・湿疹
・じんま疹
・赤い斑点や青あざが出やすい
・かゆい、ひっかき傷が出来やすい
・汗の量が多い
・皮膚が赤くなったり青白くなったりしやすい
・光の刺激に対して敏感になる
・皮下出血を起こす
・寒さに対して皮膚の血管が過敏になる
【筋肉・関節の症状】
・筋肉痛がある
・肩や首がこる
・関節が痛む、腫れる
【産婦人科関連の症状】
・のぼせたり、顔がほてったりする
・手足が冷える
・おりものが増える
・陰部のかゆみや痛みがある
・生理不順になる
・不妊症になる
・生理が始まる前にいらいらしたり、頭痛、むくみなどがある
・感染症にかかりやすくなる
【精神・神経の症状】
・頭が痛くなったり、重くなったりする
・手足が震えたり、痙攣したりする
・うつ状態や躁状態になる
・不眠になる
・気分が動揺したり不安になったり精神的に不安定になる
・記憶力や思考力が低下する
・計算能力が落ちる
・意欲が落ちる、苛立ちやすい、怒りっぽくなる
【その他の症状】
・貧血を起こしやすくなる
・甲状腺機能障害を起こす
〈引用元〉宮田幹夫(北里大学名誉教授、そよ風クリニック院長)
著「化学物質過敏症BOOKLET症状・原因・しくみ・診断・治療」(AEHF JAPAN アメリカ環境健康財団日本支部)より
化学物質過敏症に根本的な治療薬はなく、一度発症すると治癒に向けて年単位で改善が必要になります。
生活では極力化学物質の曝露(ばくろ)を避けることが大事になります。
今までの生活とはガラリと変わってしまうため、周囲の理解と協力が必要です。
もし「匂いで体調が悪くなる」「説明できない不調が続く」と感じているなら、一度化学物質過敏症の可能性について知ってみることも、自分を守る第一歩になるかもしれません。
カナリアハウスは、化学物質過敏症を発症した方への情報はもちろん、
発症していない方が発症しないための予防にもなるよう、発信していきたいと考えています。